
マルチーズの健康-平均寿命とかかりやすい病気

白く長いふさふさの毛とかわいらしい瞳で、長年愛されているマルチーズ。国内最大の犬籍登録団体・ジャパンケネルクラブが毎年発表している「犬種別犬籍登録頭数」においては、9位(8,223頭、2016年)にランクされるなど、人気犬種の一つです。今回はマルチーズの健康面について、紹介していきます。
犬の平均寿命

【犬の平均寿命の推移】
2010年:13.3歳
2011年:13.4歳
2012年:13.6歳
2013年:13.6歳
2014年:13.7歳
※引用:アニコム損害保険株式会社「家庭どうぶつ白書2016」
また、犬の平均寿命は体のサイズにより異なるとも言われています。小型犬の方が寿命は長いとされていますが、実際はどうなのでしょうか?体重を基準として、5段階にサイズを分類してみていきましょう。
◆超大型犬(体重40kg以上)10.6歳
◆大型犬(体重20kg以上~40kg未満)12.5歳
◆中型犬(体重10kg以上~20kg未満)13.6歳
◆小型犬(体重5kg以上~10kg未満)14.2歳
◆超小型犬(体重5kg未満)13.8歳
やはり、サイズが小さい犬の方が比較的寿命が長い傾向が分かります。ただし、すべてが当てはまる訳ではありません。
平均寿命は犬種の影響が強い-マルチーズの平均寿命は?
例えば柴犬は中型犬に分類されますが、平均寿命は14.5歳です。平均寿命は、サイズよりも犬種による影響が強いとも考えられます。最も平均寿命が長いのはトイプードルの15.3歳。続いてミニチュアダックスと小型のミックス(混血犬)の14.6歳です。
マルチーズの平均寿命
ちなみに、超小型犬に分類されているマルチーズの平均寿命は13.1歳です。犬全体を考えれば長いと言えますが、超小型犬のなかでは若干短い値となりました。マルチーズは、ほかの犬種と比べ特定の心疾患にかかりやすいとされています。では、どんな病気にかかりやすいのでしょうか?
マルチーズがかかりやすい病気

僧帽弁閉鎖不全症
犬が罹患する心疾患のうち、7~8割は僧帽弁閉鎖不全症と言われています。僧帽弁閉鎖不全症は老齢の小型犬に多く発生する心臓の病気で、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁(左房室弁)がうまく閉じなくなり、血液が逆流することで発症します。初期はあまり症状が見られませんが、病気が進むと徐々に左心不全が進んでいきます。激しい運動したあとや興奮した際に咳が出たり、呼吸困難が現れたりすることも。基本的に治る病気では無いため、投薬により症状を抑えながら生活のペースを保てるように治療を行います。
マルチーズは7~8割が発症するとされ、発症が見られるのは大体6~7歳位から。10歳頃から増加していきます。オスのピークは11歳、メスのピークは12歳ほどです。該当する年齢を迎える頃には、早期発見・早期の投薬開始が治療のキーポイントとなるので、定期的な健診を受けるなど対策が必要です。
◆ポイント
・毎日の投薬が必要です。薬を切らさないように、管理はしっかりと。
・激しい運動は避けましょう。散歩はゆっくり歩いて、階段や坂道はコースから外します。カートで散歩に出てもOKです。
甲状腺腫瘍
腫瘍疾患の一つ、甲状腺腫瘍。犬の場合、多くは悪性腫瘍(いわゆる癌)です。転移もままあり、肺への転移が多くみられます。マルチーズのほか、ビーグル、シェルティ、ゴールデンレトリバーなどが発症しやすい犬種です。初期症状は無く、腫瘍が大きくなると外から触ってもしこりが分かるようになります。大きくなった腫瘍はほかの器官を圧迫するため、荒い呼吸や激しい咳、食道の圧迫により吐きそうな仕草を見せたりや嘔吐したりすることも。
治療は、外科手術による腫瘍の切除です。初期の場合、腫瘍を完全に摘出できれば1年以上の生存も期待できます。
ただし、腫瘍が大きく周囲の組織と癒着が認められる場合や肺への転移が見られる場合、予後は難しいとされています。それでも手術による外科的切除が行われる理由は、圧迫による症状が進行すると大きな苦痛を味わうことになるからです。
甲状腺腫瘍は悪性度が強いものの、進行は遅いと言われています。腫瘍疾患は8~9歳にかけて増加していく傾向がみられるので、予め定期的な健診を受けましょう。やはり、早期発見・早期切除が非常に重要です。
流涙症・涙焼け
内眼角からあふれた涙が、周囲の被毛に反応して赤褐色に変色する症状です。マルチーズのほか、プードルやポメラニアン、シーズーなど白い毛色がいる犬種に多くみられます。結膜炎や角膜炎・逆さまつげなどの眼疾患や、涙が出る涙点の排泄障害、涙点に隣接する箇所の疾患など原因はさまざま。疾患がある場合は原因疾患を治療し、排泄障害の場合は涙管の洗浄を行います。
◆ポイント
・水やぬるま湯、クリーナーなどで湿らせたコットンで、押さえるように眼の周りを拭きましょう。変色を予防するためにも、毎日拭くとよいです。
・眼を拭いた後は、ドライヤーなどで必ず乾かします(風が目に入らないように気をつけましょう)。
参考文献
アニコム損害保険株式会社「家庭どうぶつ白書2016」 https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201612.pdf
株式会社ベネッセコーポレーション「いぬのきもち 2017年3月号」
株式会社ベネッセコーポレーション「いぬのきもち特別編集 子犬と仲良くなる育て方 健康・お世話編」
パイ インターナショナル(公益財団法人 動物臨床医学研究所 編、山根 義久 監修)「イヌ+ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版」