愛情や信頼から見つめる

飼い主に撫でられている犬
「目は口ほどに物を言う」「目は心の鏡」など、目にまつわることわざがたくさんあることからもわかるように、私たち人間は、コミュニケーションに視線や目の表情を使います。

そのため、ほとんどの動物が目を合わせるのを嫌がるのに対し、私たち人間と長くともに暮らしてきた犬たちは、人間に合わせ、アイコンタクトでのコミュニケーション能力が進化してきたようです。

犬は、オオカミにはない「眉の筋肉」が発達しているという研究結果も発表されました。犬たちは目の上の筋肉を上手に動かし、上目遣いをしたり白目を見せたり、表情をつけながら飼い主さんを見つめ、コミュニケーションをとるのです。

犬と飼い主さんが見つめ合うことで、親子間の絆を形成するのに重要な、愛情ホルモンともいわれる「オキシトシン」の分泌が双方で高まることも分かっています。

見つめ方

  • 目を細め穏やかな表情をしている
  • 見つめながら口角をあげ、笑顔のような表情をしている

犬の気持ち

飼い主さんが大好きで、信頼しています。目を細めながら見つめているのは、愛情信頼の表現だと考えてよいでしょう。
愛犬が寝る前に、眠そうな目で飼い主さんを見つめてくるのは、安心してリラックスしているからです。

飼い主の行動を観察している

ソファの上で飼い主を見つめている大型犬
もともと犬は、飼い主のことをいつも気にかけ、知りたいと思っています。
愛犬がよくくつろいでいるお気に入りの場所は、飼い主さんの顔と行動がじっくり観察できる場所ではないでしょうか。
飼い主を観察しているつもりのワンちゃんもいますし、見守っている気持ちの子もいます。

見つめ方

  • いつのまにかじっと見つめている
  • 飼い主の動きを追っている

犬の気持ち

飼い主の行動を見ながら、「どこかに出かけるのかな?」「一緒に連れて行ってくれるのかな?」「なにかくれるかな?」などと考えています。

要求があって見つめる

リードをくわえている子犬
犬がおねだりのために見つめてくる姿は、本当にかわいいものです。しかし、かわいいからといって、ごはんやおやつをあげすぎてしまわないよう、気を付けてくださいね。

見つめ方

  • 目をキラキラ輝かせている
  • しっぽを振りながら見つめている
  • おすわりしている
  • 上目遣いで見ている

犬の気持ち

「おやつがほしい」「遊んでほしい」「お散歩に行きたい」など、なにかを要求しています。

緊張から見つめる

歯をむき出しにしている犬
緊張や嫌がっている状態が続いたり、繰り返したりしてしまうと、歯をあててくる子もいるため気を付けましょう。

SNSなどで、鼻にしわを寄せたり、なにかを見つめ歯をむき出しにしたりしている犬の写真が「おもしろかわいい」投稿として反応があるのを見かけることもあります。
たまたま撮れたのであればいいのですが、よい写真を撮ろうと犬が嫌がることしたり、撮れるまで嫌がっていることを続けたりするのはやめましょう。犬にとってストレスになります。

見つめ方

  • 鼻にしわが寄っていたり、歯をむき出しにしたりしている
  • 見つめながら低い声で唸っている

犬の気持ち

「そこは触ってほしくない」「これを取り上げられたら嫌だ」という拒否の気持ちを持っているか、「苦手なこと、嫌いなことをされるのでは」と緊張している状態です。

なぜ見つめ返すと目をそらすの?

伏せの状態で上目遣いをしているキャバリア
ジーっと見つめてくるけれど、見つめ返すと視線を外されるなんていうこともしばしば。一体なぜでしょう。
実はこれにも、ちゃんとした理由があるのです。

気持ちを落ち着かせようとしている

帰宅したとき、大喜びで玄関まで迎えに来てくれる愛犬が、しっぽはブンブン振っているけれど視線は合わない、という状態。これは、興奮しすぎているのを犬自身が理解していて、気持ちを落ち着かせるために目をそらしています。

この行動は、はしゃぎすぎても走り回ったり飛びついたりしてはいけないと教わっている、しっかりしつけされている犬によく見られる仕草です。

大喜びしながらも、飼い主と目が合わないよう視線を外しているのであれば、興奮しすぎないようコントロールしていると思っていいでしょう。

苦手なことを前にして困っているとき・緊張しているとき

たとえば、病院が嫌いであれば診察台の上にいるとき、トリミングが苦手であればシャンプーや爪切りのときに、相手の目をまったく見ずにやり過ごしているのではないでしょうか。

これは、苦手なことから逃れたい、見ないようにしたいという心理で、嫌なことから目をそらしている状態です。しっぽも下がっているはずです。

この状態が長く続くと疲れがたまります。苦手なことが終わったら、頑張った愛犬を褒め、ゆっくり休ませてあげましょう。

ストレスから逃れるため

犬はストレスから逃れるために、目をそらすことがあるともいわれています。

私たちは、犬になにかを覚えてもらおうとするとき、アイコンタクトを軸に練習をします。非常にわかりやすくもありますが、トレーニング中にアイコンタクトがとれなくなってきた場合は、犬がストレスを感じているということです。

トレーニング時間が長すぎて集中できなくなってきた、飼い主の口調が強すぎる、要求されていることがわからないなど、さまざまな原因が考えられます。

ひょっとしたら、愛犬と飼い主さんとの信頼関係が、まだ構築途中で、じっと見られるとまだストレスを感じてしまうのかもしれません。
アイコンタクトがとれない場合は、ストレスとなっている原因を探ってあげましょう。

叱られているとき

叱られているとき、相手の目をじっと見るのは難しいと思います。それは犬も同じです。叱られているときは、叱っている人と目が合わないように視線を外します。

飼い主が叱っているときに愛犬が目をそらすのであれば、叱られている状況を十分に理解しているということです。お説教は短く切り上げるようにしましょう。

長々と叱るのは効果がないうえに、犬は叱られている理由が分からなくなってしまいます。
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敵対心がないことを示そうとしている

たいていの動物は、自分の視線がどこを向いているか知られるのを恐れ、目が合うのを避けますが、長く人と暮らしてきた犬はそうではないことを解説しました。

しかしこれは、人間に対してだけになります。相手が犬であれば、目が合うのは本能的に避けるでしょう。オオカミに近い犬種はなおさらです。

飼い主に対しても本能的に「敵意はないですよ」「喧嘩をするつもりはないよ」という心理で、目をそらすことがあるようです。

まとめ

飼い主に撫でられている柴犬
顔は動かさず目だけキョロキョロさせて飼い主の行動を追っていたり、お気に入りの場所からずっと飼い主のことを観察していたりする様子は、愛おしさも感じますよね。
愛犬が見つめてきたら優しく抱きしめるなど、アイコンタクトでコミュニケーションをとりながら、お互いのオキシトシン分泌を促し合う、幸せな時間を過ごせたらいいですね。