犬のしっぽの役割

公園を走っている柴犬

感情表現

甘えるようにクンクンと鼻を鳴らしたり、大きな声でワンワンと吠えたり、前足を使って飼い主に触れてきたりと、犬はいろいろな方法で自分の感情を表現し、伝えようとします。

しっぽも、犬にとって感情表現のための重要な部位。しっぽの振り方、速さ、高さによって、さまざまな感情を表現しています。

バランスをとる

犬のしっぽは、激しい動作の際にバランスを保つためにも役に立っています。
とくにドッグランなどで全力疾走するとき、カーブを回る際に重心移動をするとき、急に止まろうとするときなど、しっぽを動かしてバランス保持を補助します。

水が好きな犬は、泳ぐときにもしっぽが大活躍
スクリューのように回したり、オールのように振ったりして推進力を助けるとともに、進行方向へのバランスをとる役割も果たしています。

体温を維持する

寒い場所で体を休めるとき、犬は体を丸めます。そのとき、しっぽで顔や鼻先を覆って、冷たい空気を吸わないようにしているのです。

犬のしっぽから感情を読み取る

おしりを上げてしっぽを振っているボーダーコリー
犬のしっぽから感情を読み取りたいなら、まずは平常時のしっぽをよく確認しましょう。
しっぽのつき方は犬によって異なりますが、普段のしっぽの状態を知っておくことで、愛犬がしっぽを動かすとき、その位置が高いのか・低いのか、動き方の様子を見分けやすくなります。

しっぽを振る

しっぽを高く上げて左右に振る

しっぽを高く上げて左右にぶんぶん大きく振っているとき、犬は「うれしい」「楽しい」という明るい気持ちになっていることが多いです。あまりにもうれしいときは腰やおしりから振ってしまうこともあります。

一方、しっぽを上げて静かに大きく振っているときは、強い不快感や警戒感を表現している場合もあります。

いずれにしても、犬がしっぽを上げて大きく振っている場合は、感情が大きく揺れ動いているとき。しっぽだけでなく、耳や口もと、顔の表情もよく観察して判断しましょう
もし顔にしわを寄せて前歯をむき出していたり、脅かすように声をうならせていたりするのであれば、不快感を抱いている対象から静かに距離をとり、犬を落ち着かせます。

しっぽを垂らして左右に振る

しっぽから力を抜いたように垂らし、体高より低い位置でゆるやかに振っている場合は、その状況に安心してリラックスしていることが多いようです。
家族や仲良しの犬などの顔を見ながら穏やかにしっぽを振る様子は、軽いあいさつのようにも見えてほほ笑ましいですね。

しっぽが下がる、しっぽを足の間に巻き込む

しっぽを足の間に挟んでいるときは、愛犬にとって緊急事態。ストレスや不安、強い恐怖を感じています。
しっぽを隠して体を小さく見せることで、敵意がないのを表現しています。また、恐怖を感じている相手にしっぽをつかまれないように隠すという説もあるようです。

犬がしっぽを足の間に巻き込んでいるとき、恐怖のあまり、安心できる場所を求めて逃げようとしたり、自分の身を守るために攻撃に転じたりする場合もあります。
恐怖を感じる原因から速やかに遠ざけ、無理にがまんを続けさせないようにすることが大切です。

しっぽを追いかける・噛む

遊んでいる

犬が自分のしっぽを追いかけているときは、しっぽを動くおもちゃに見立て、ぐるぐる回って遊んでいます。とくに子犬のころによく見られるしぐさで、成長とともに落ち着いてくるのが一般的です。

しっぽを追いかける行動に飼い主が過剰に反応すると「構ってもらえる」と学習してしまい、ぐるぐる回る癖がついてしまう可能性もあるので注意しましょう。

ストレスを感じている

ストレスのため、犬は自分のしっぽを激しく追ったり噛んだりすることがあります。長時間の留守番やスキンシップ不足、運動不足などが原因として考えられます。

留守番が多く、愛犬から目を離す時間が長い飼い主さんは、愛犬のしっぽの毛が短くなっていないか、皮膚を舐めたり噛んだりしていないかもチェックしてみましょう。

かゆみ・痛みを感じている

体についたノミ・マダニの影響や、細菌繁殖などが原因で皮膚に不快を感じ、激しくしっぽを噛んだり追ったりすることもあります。

しっぽやおしり周りの被毛をかき分けて、出血はないか、皮膚が荒れていないか、ノミの糞などがないかを確認してあげましょう。

犬のしっぽにしていけないこと

しっぽを鼻にくっつけて丸まっているラブラドールレトリバーの子犬
体を撫でられるのが好きでも、しっぽだけは嫌がる犬が多いものです。
小さな子どもが犬のしっぽをつかんだり、引っ張ったりするのを目にすることがありますが、これは絶対にしてはいけないこと。犬は体の先端部に感覚器が集まっているため、触れられたときも敏感に反応し、時には噛みつくなどの思わぬ行動に出ることもあります。

また、しっぽを引っ張られたことで脱臼や骨折を起こすこともあります。
犬のしっぽの骨は細く、関節も多く集まっているデリケートな部位。ブラッシングの必要があるときも乱暴に扱わず、丁寧に触れてあげましょう。

犬の気持ちを理解するには

握手をするゴールデンレトリバーと飼い主
短いしっぽ、長いしっぽ、丸いしっぽ、ピンとまっすぐなしっぽなど、犬のしっぽにはさまざまな形や種類が存在します。

しっぽは犬にとって、コミュニケーションのために重要な部位。しかし、形状や長さなどによって、しっぽの動きがわかりにくい犬種もいます。
そのため、しっぽの動きだけで愛犬の気持ちを読み取ろうとするのは難しいのです。

犬は感情表現豊かな動物なので、吠え方や耳の動き方、手足の動かし方、視線、表情など体全体を使って、気持ちの表現をしています。しっぽだけにこだわらず、日ごろからしぐさや様子をよく観察して、愛犬の思いをしっかりと受け止めてあげたいですね。

まとめ

しっぽを振りながら飼い主を見つめるビーグル
犬の気持ちを知る手がかりとなるしっぽについて、さまざまな角度から見てきました。犬のしっぽは、喜びや恐怖心だけでなく、警戒心やストレスを感じていることまでわかってしまうものなのです。
表情は落ち着いているけれど、しっぽを静かに振って喜びを表現しているなど、愛犬の本音も表れてしまう魅力的な存在でもあります。
細やかな心の動きを表現する、機能的にも繊細な愛犬のしっぽ。傷つけないように大切にしてあげましょう。