犬の食事(フード)の選び方

食事をもらう犬

「総合栄養食」を選ぶ

犬の食事は「総合栄養食」と呼ばれるドッグフードを基本とします。
総合栄養食とは、それと新鮮な水だけで必要な栄養を摂取できるようになっているフードのことです。
いまの愛犬に欠かせない、必要なものを、適切な量で与えることができます。

年齢に応じたフード選びをしよう

ドッグフードはさまざまなメーカーから、数多くの種類が販売されています。
また、子犬用・成犬用・シニア犬用などのライフステージごとに分けられているのも、ドッグフードの大きな特徴です愛犬の年齢に適したものを選びましょう。

子犬期のフードの特徴

子犬は体が小さく、内臓も未発達であることから、あまり多くの量を食べられません。
そういった子犬のために、小粒サイズで、少量で効率よくエネルギーがとれるように作られているのが、子犬用フードです
成長に必要な栄養素も配合されているため、カロリーだけでなく栄養価も高いものとなっています。

子犬の期間は犬種や犬の大きさによって異なります。子犬用フードをいつまで与えるべきか、切り替え時期などについては、獣医師やブリーダーに相談すると安心です。

成犬期のフードの特徴

犬のライフステージのなかでもっとも長いのが、成犬期です
長い成犬期のあいだ、必要な栄養をバランスよくとり、理想体重を維持することは、愛犬が長く健康でいるためにとても大切なことです。
愛犬の健康や体質、趣向をしっかり考え、適した成犬用フードを選びましょう。

高齢期・老齢期のフードの特徴

「高齢期用」「シニア用」「エイジングケア」などの表記があるフードです。
年齢を重ねると、消化力や身体機能が徐々に低下します
そういった老齢期の犬に合うフードとして、消化しやすいものやサプリが配合されたもの、老化によって衰えた機能に着目したものなど、さまざまなものが販売されています

犬のサイズを考慮したフード選びも

先ほども説明した通り、犬はサイズによって成長スピードに差があります。
超小型犬・小型犬は生後8~10カ月くらいまでなのに対し、超大型犬では生後18~24カ月くらいまでが成長期にあたるといわれています。
つまり同じ月齢でも、サイズごとに必要な栄養やカロリーは異なるため、それぞれのサイズに適したフードを与えることが望ましいです。

ドッグフードのパッケージに「超小型犬(4kgまで)」「大型犬(成犬時体重26~44kg)」などの記載があるので、愛犬に合ったフードを選んであげましょう。

こだわりたい人のドッグフード選び

プレミアムフード

プレミアムフードについて、明確な定義や基準はありません。そのため、どのフードをプレミアムフードと表示するかはメーカー基準ということになります。
しかし「プレミアム」の意味を考えると、各メーカー、原材料にこだわっている商品が多いようです

オーダーメイド(カスタマイズ)フード

原材料にこだわり、犬それぞれの特徴や悩みに応じたフードのことです。購入する際には、主にネットでの注文になります。
受注後に製造し、新鮮さをうりにしているところも多いようです。
ただし、犬の栄養学についての知識がない人が作っている製品も存在しますので、信頼がおけるメーカーのサービス・フードであることを十分に確認しましょう。

気になるポイントに配慮したフード

ドッグフードには、気になるポイントがあらわれたときに与えるフードもあります。
たとえば、下記のようなポイントを考慮したさまざまな商品が各メーカーから販売されています。
  • 減量・体重管理をサポートするフード
  • 皮膚・被毛のケアに配慮したフード

これらはペットショップやインターネットの通販サイトでも購入が可能です。

療法食

また、特定の病気にかかっている場合などには、獣医師が健康状態を総合的に判断して、療法食を処方することがあります
たとえば、慢性腎臓病で成分を調整した腎臓病の療法食が必要と判断されるケースや、糖尿病で糖の吸収速度に配慮したフードが必要とされるケースなどがあります。
これらのフードは、必ず獣医師の指示のもとで食べさせてください

犬種別フード

犬は種類によって体質が異なるため、積極的にとりたい栄養成分も犬種別ごとにバラつきがあります
そのため、各メーカーでは「トイプードル用」「柴犬用」といった犬種別フードも販売されています。
たとえば体質的に太りやすく、皮膚病になりやすい傾向にある柴犬のフードには「減量・体重管理のサポート」をしながら、「皮膚・被毛のケア」もできる成分などが含まれていることが多いです。

犬の食事(フード)の与え方

食事をする犬
フードの与え方を各ライフステージでご紹介します。愛犬に合ったものを選びましょう。

子犬期

子犬期~成長期は、必要な栄養が配合された子犬用フードを与えるのがベストです。
とはいえ、生まれてすぐにドライフードは食べられません。しばらくは母犬の母乳で栄養をとります。
なにかしらの問題があり、母乳が足りていない場合は代用乳を与えます。

生後1~2カ月になったら離乳食を開始しましょう。基本の離乳食はドッグフードをお湯でふやかし、やわらかくしたものでOKです。

生後3カ月くらいになるとドライタイプのままで食べられるようになりますが、いきなり食べ始められる子ばかりではありません。
時期になったら、少しずつふやかす水の量を減らし、徐々にドライにしていくとよいでしょう

また、この時点でもまだ、一度に多くの量を食べることができません。フードは一度の量を少なくし、1日3回以上にわけて与えましょう

様子を見ながら徐々に切り替えよう

高野 航平先生

ワンちゃんのなかには、ドライが苦手な子や、水分をとるのが苦手な子もいます。3カ月を過ぎたからといって、必ずしもドライに置き換えなければならないわけではありません。もちろん、大人になってもふやかしても大丈夫です。

成犬期

成犬用のドッグフードは基本、1日1~数回に分けて与えます
成犬期からのタイミングで2回食にする場合も多いですが、必ず2回食にしなければいけないということではありません。

また、与える量は製品パッケージに記載されているものを参考に計算しましょう。
早食いの癖がある子に対しては、フード皿に一度にのせず、数回に分け、できるだけゆっくり食べさせます。
器に凹凸がついた早食い防止のフード皿もあります。なかなか治らない場合は活用してみましょう。

ごはんの与え方は愛犬の体質に合わせて

高野 航平先生

2回食だとごはんの間が空きすぎて、空腹により嘔吐する子もいます。食事の回数は、ワンちゃんの生活習慣や体質と相談して決めましょう。

高齢期

小型〜中型犬の場合は7歳くらいから、大型犬は5歳からを高齢期とすることが多いです。
食事回数は1日1~数回、基本的には成犬期の頃と同じで問題ありません。
しかし高齢期に入ると、徐々にエネルギー消費量が落ち、消化力も衰えます。
年齢にあったシニアシリーズのフードへの変更を検討してみましょう。

老齢期

小型~中型犬では11歳頃、大型犬では8歳を過ぎた頃から、老齢期と呼ぶケースもあります。
この時期になると、一度の食事で食べられる量が徐々に減ってきます。
日々の運動量も少しずつ減り、若い頃のような食欲がみられなくなるかもしれません。
老齢期に入ったら、年齢や健康状態に合わせたごはんに変えるといいでしょう

また、年齢とともに、健康トラブルがおこりやすい時期に突入します。
定期的に動物病院で健康診断をしてもらい、必要に応じて、健康状態に合わせたフードを処方してもらったり、獣医師にアドバイスをもらったりすることも必要です。

ごはんを食べやすくさせる工夫を

高野 航平先生

筋力の低下や関節炎などによってうつむく体制がとりにくくなるワンちゃんも多いため、お皿の位置を高くするなど食べやすい配慮をしていただくこともおすすめです。

犬の食事の量・タイミング・回数

食事をする子犬
基本的にはドッグフードのパッケージに記載されている「給与量の目安」を参考に与えてください。

ただし、運動する子や運動しない子では、必要なエネルギーの量は異なります。体重や年齢だけを目安にすると、与えてすぎていたり、足りなかったりする場合もあります。
「最近ちょっと太ってきた……」「ちょっと細すぎるかも?」とお悩みの方は、体格や体重をチェックしながら、下記の計算式を参考にフード量を調節してみるのもいいでしょう。

まれに、体重の増加や減少が病気に関連しているケースもありますが、いま与えているカロリー量を把握しておくことは、獣医師に相談する際にも役立ちます。

ドッグフード給与量の計算式

1日のドッグフード給与量(g)=DER※(kcal)÷ペットフード100gあたりの代謝エネルギー(kcal/100g)×100

※DER(1日のエネルギー要求量)=「RER※(安静時エネルギー要求量)」(kcal)×係数
※RER=体重(kg)×30+70

【係数】
愛犬の年齢・状態にあわせて係数をあてはめましょう。

・生後4カ月以内:3.0
・生後4カ月~成犬:2.0
・去勢、避妊手術していない成犬:1.6
・去勢、避妊手術済みの成犬:1.4
・肥満気味、活動量が少ない犬:1.2

留守番のときは自動給餌器を活用しよう

基本的に犬に長時間の留守番をさせるのは好ましくありません。
しかし、事情があって留守時間が長くなり、食事の間隔が空きすぎる、留守中に空腹な様子が見られる場合は、自動給餌器を設置するのがおすすめです。飼い主さんが必要だと感じた場合にはぜひ活用してみましょう。

設置の際は、いたずらしたり、ひっくり返されたりしないよう、工夫してください。
いきなり本番で使用せず、まずは飼い主さんが在宅のときに練習をします。たっぷりの新鮮な水の用意も忘れないようにしましょう。

犬がごはんを食べない理由と対処法

ごはんを食べない犬
私たちがいつも食欲旺盛とは限らないように、犬にも食欲の波があり、食欲不振にはなにかしらの理由や原因があります。
もし愛犬がごはんを食べなくなったら……。原因を探り、改善のためになにができるか考えましょう。

わがまま

特徴

「もっとおいしいものがもらえるはず」という期待から、目の前のごはんを食べないことがあります。
これは、おやつの比率が多かったり、頻繁に人の食べ物をもらっていたりと、ごはん以外の食べ物に慣れている子によくみられます

対処法

用意したごはんを20~30分置いていても食べないときは片付けてしまいましょう。
このときに代わりのものを出してしまっては本末転倒です。少しかわいそうな気もしますが、片付けられる前に食べないとなにも食べられない、というルールを徹底しましょう。
そもそもは飼い主さんがごはん以外のものを与えてしまったことが原因です。
まず、人間の食べ物は絶対に与えないようにし、おやつは与える量に十分注意しましょう。

ストレス

特徴

飼育環境に変化があった、留守番が長い日が続いている、コミュニケーション不足、家族のケンカや言い争いで空気がピリピリしている……など、ストレスが原因で食欲不振になるケースも多くあります。
環境の変化とは、引っ越し、飼い主がかわる、家族構成の変化、旅行、シッターやペットホテルに預けるなど、さまざまなパターンが考えられます。

対処法

まずは愛犬のストレスになっている原因を探りだしましょう。
原因によっては改善が難しいものもあるかもしれません。それでも、愛犬の飼育環境を見直す、散歩時間を充実させる、たっぷりのコミュニケーションをとるなど、できることから取り組みましょう
飼育環境の変化が原因であれば、原因そのものの改善は難しくても、食事中の部屋を暗くしたり、静かな環境をつくってあげたりすることで解決できる場合もあります。

老化

特徴

老化によって消化機能が衰えたり、必要なエネルギー量が減ったりして食べなくなることもあります。
また、気づきにくいことも多いですが、歯周病などお口のトラブルで痛みが生じ、食欲が落ちてしまう子もいます。
そういったトラブルがないか、動物病院で診察を受けてみるといいでしょう

対処法

ごはんの量より質を重視し、少量でも栄養を補えるフードを探しましょう。
香りが立つよう、フードを温めてみるのもよいでしょう。
やわらかいごはんの方が食欲が出る子、食べやすい子ではぬるま湯でスープをふやかす、ウェットタイプを混ぜるなどの方法も効果的です。
愛犬の食欲を刺激し、食べやすいようにしてあげましょう。

病気

特徴

下記のような様子が見られる場合には、病気が関係している可能性もあります。
  • 食欲の低下が続いている
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 嘔吐や下痢をしている
また、なにかを誤飲しているなど、事故やケガの可能性も否定できません。

対処法

病気で食欲が落ちた際は、その原因によって対処はさまざまです。
食欲がないときに、「これなら食べてくれるかも……」と食べ慣れていないものを与えて、かえって体調を崩してしまうケースもあるので、注意が必要です。

また、嘔吐がある場合などは、一時的にごはんを中止する場合もあります。
病気が疑われる際は、まずは早めに受診し、かかりつけの獣医師の指示にしたがって、ごはんを与えてください

犬に人間の食べものを与えてもいい?

人間の食べ物を見つめる犬

人間の食事のおすそわけはNG

私たちが食べるものは、犬にとっては味が濃すぎる、塩分糖分が多すぎる、NG食材が使われている可能性が高いなど、多くの問題があります
また、犬には犬専用の食べものがあるので、わざわざ人間のものを与える必要がありません。与えないよう徹底しましょう。

人間の食事を食べたことのない犬は、当然その味を知りません。もらえるもの、食べられるものという認識や関心を持たせなければ、お互いストレスなく同じ空間で食事することができます。

これまでに数回あげてしまったという飼い主さんも、いまからでも遅くありません。ぜひ徹底してみてください。

犬にとっては危険なものも

私たちにとっては身近な食材でも、犬にとっては危険な食べ物である場合があります。
下記のような食品が代表的で、最悪の場合、命にかかわる可能性がある食材もあります。

中毒を起こす人間の食べ物

  • ぶどう(レーズン、マスカット含む)
  • チョコレート・カカオ類
  • たまねぎ、ねぎ、にんにく、ニラ、ラッキョウ
  • キシリトールを含む食品


ここで紹介した食品以外でも、人間の食べ物のなかには塩分や糖分が多く含まれ、犬の体に負担をかけるものも少なくありません。原則として人間の食べ物は与えないことをおすすめします。
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犬の手作りごはん

メリット

飼い主さんの手作りごはんで、新鮮な素材や旬の食材を楽しむことができることはメリットのひとつでしょう。
ほかに、愛犬が食物アレルギーを持っている場合には、該当のアレルゲンを含む食材を避けたメニューを用意できるというメリットもあります。

また、ドライフードと比較すると水分量が多いのも特徴です。夏場の熱中症対策のひとつや、水分をとるのが苦手な子に対する水分摂取の方法のひとつとして用いることができるでしょう。

しかしながら、手作りごはんのみで栄養バランスを整えることは難しいです
取り入れる際には、まずは、ふだんのドッグフードにトッピングする、おやつや補助食として用いるなど、食生活のプラスアルファの要素として与えてみることから始めるのがいいでしょう。

デメリット

手作りごはんだけで必要な栄養を摂取させることは、一般の獣医師でもかなり難しいです
どうしても手作りごはんのみで生活する場合には、犬の栄養学に詳しい専門家に相談することがすすめられます。

とくにビタミンや微量ミネラルについては、食材だけでは要求量を満たすことが難しく、追加でサプリメントが必要なケースがほとんどです。
不十分な手作りごはんのみの生活が長期間に及ぶと栄養障害や代謝病を引き起こす可能性があるため、安易に手作りごはんのみで生活することはおすすめできません。

また、ドライフードに比べると、品質保持のための食品添加物が含まれていないことや、水分の多さから、どうしても痛みやすい傾向にあります
とくに夏場などは人間の食事と同様に注意が必要です。

獣医師からのメッセージ

わんちゃんの幸せはまず健康を保つこと、そして健康を保つことの第一歩は毎日のごはんです。
必要なカロリーや適したごはんはわんちゃんそれぞれで異なりますので、わんちゃんのご様子や体格をチェックしながら、ごはんの量や種類、与え方を調整してあげてくださいね。

また、食欲は健康のバロメータのひとつですご自宅でのわんちゃんの食べっぷりに変化がないか毎日のご様子を見てあげてくださいね。

まとめ

食事を楽しむ犬
子犬のうちはこまめにごはんを与える必要があり、留守時間が長いときにはなんらかの対策も必要です。
大変かもしれませんが、愛犬には長く健康でいてほしいですよね。
この願いは、愛犬の毎日のごはんについてしっかり学び、ベストな食事を与えられるよう意識して取り組むことで叶えられるはずです。楽しみながら頑張りましょう。