分離不安とは
「分離不安」とは、家族や親しい人などの特定の人と離れることに過剰な不安や恐怖を覚えてしまう状態です。「分離不安症」または「分離不安障害」とも呼ばれます。
症状の多くは飼い主さんの対策で改善できる軽度のものといわれています。
ただ、なかには精神的・肉体的なダメージから、問題行動に発展するケースもあります。
愛犬の「分離不安」のサインを見逃さず、早期に対処することが必要です。
症状の多くは飼い主さんの対策で改善できる軽度のものといわれています。
ただ、なかには精神的・肉体的なダメージから、問題行動に発展するケースもあります。
愛犬の「分離不安」のサインを見逃さず、早期に対処することが必要です。
愛犬はいくつあてはまる? 分離不安の症状をチェックしてみよう
以下の10項目にあてはまるような症状がみられる場合は、分離不安症の可能性があります。愛犬の様子に注意してみましょう。
- 留守番中に部屋を荒らす
- 留守番中に物を破壊する
- 留守番中にトイレを失敗する
- 飼い主の帰宅時にお漏らし(うれしょん)する
- 留守番中に自傷行為をする(自分の足を噛むなど)
- 外出の支度中や留守番中に吠え続ける
- 飼い主の外出に気付くとソワソワする
- 飼い主の外出を阻止しようとする
- 飼い主の後をついてまわる
- 留守番中や帰宅後に体調を崩す
1.留守番中に部屋を荒らす
留守番中に部屋を荒らすことがあります。
ゴミ箱をひっくり返していたり、ドアや壁をかじったり、これまでしていなかったことであればとくに、分離不安からくるものと考えてよいでしょう。
▼こんな行動は要チェック
ゴミ箱をひっくり返していたり、ドアや壁をかじったり、これまでしていなかったことであればとくに、分離不安からくるものと考えてよいでしょう。
▼こんな行動は要チェック
- 飼い主の留守中、いつもはいじらないものをいじった跡がある
2.留守番中に物を破壊する
留守番中にトイレシーツを噛みちぎったり、スリッパを壊したりすることもあります。
▼こんな行動は要チェック
▼こんな行動は要チェック
- 家に帰ると物が壊れている
- 留守番をさせているときに限っていたずらをする
3.留守番中にトイレを失敗する
留守番中にトイレを失敗することも、分離不安の症状のひとつです。
留守番中に限って粗相をするのは、不安やパニックからのものである可能性があり、自分のにおいをつけて安心したいからという説もあります。
▼こんな行動は要チェック
留守番中に限って粗相をするのは、不安やパニックからのものである可能性があり、自分のにおいをつけて安心したいからという説もあります。
▼こんな行動は要チェック
- 帰宅すると廊下や部屋に粗相した形跡がある
- いつもできているトイレを留守番のときだけ失敗する
4.飼い主の帰宅時にお漏らし(うれしょん)する
分離不安の犬は、飼い主さんの帰宅時に興奮してお漏らし(うれしょん)をしてしまうことも。
うれしょんは子犬期にはよく見られますが、成犬になってからも続く場合は分離不安症の可能性もあります。
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5.留守番中に自傷行為をする(自分の足を噛むなど)
留守番中に自分の手足を舐めたり噛んだりする犬もいます。
自分の足をなめているだけなら、一見問題がないように思えます。しかし、舐める時間が長く頻度が高い・舐める行為に執着しているなどの様子が見られると、「自傷行為」という問題行動である可能性があります。
具体的には、炎症ができたり、被毛が抜けたりするまで続けている、5分以上夢中になってなめ続けていて、呼びかけても止めないなどの症状が、心配なケースといえます。
たいていはさびしかったり退屈だったりした時間がきっかけで始まります。
▼こんな行動は要チェック
自分の足をなめているだけなら、一見問題がないように思えます。しかし、舐める時間が長く頻度が高い・舐める行為に執着しているなどの様子が見られると、「自傷行為」という問題行動である可能性があります。
具体的には、炎症ができたり、被毛が抜けたりするまで続けている、5分以上夢中になってなめ続けていて、呼びかけても止めないなどの症状が、心配なケースといえます。
たいていはさびしかったり退屈だったりした時間がきっかけで始まります。
▼こんな行動は要チェック
- 帰宅後愛犬の前足の毛がよだれで濡れている
- 足やしっぽが傷ついていたり、毛の一部が抜けてしまったりしている
6.外出の支度中や留守番中に吠え続ける
どうにかして飼い主さんにこのままここにいてほしい、ひとりになりたくないという気持ちからの行動です。
▼こんな行動は要チェック
▼こんな行動は要チェック
- 飼い主がバッグをもったり、着替えたりしているのに気づくと吠えだす。
7.飼い主の外出に気付くとソワソワする
これも、ひとりになりたくないという不安からの行動で、なんとか飼い主さんを引き止めたいと考えています。
▼こんな行動は要チェック
▼こんな行動は要チェック
- 飼い主の外出前になると同じところをぐるぐるまわる
- 留守番の雰囲気を察すると部屋を歩きまわる
8.飼い主の外出を阻止しようとする
飼い主さんが外出するとわかると、お出かけを阻止しようと行動します。
ドアの前や廊下、玄関に座り込んだり、飼い主さんの前に立ったりして、飼い主さんが外へ出られないようにようにする子もいます。
▼こんな行動は要チェック
ドアの前や廊下、玄関に座り込んだり、飼い主さんの前に立ったりして、飼い主さんが外へ出られないようにようにする子もいます。
▼こんな行動は要チェック
- 飼い主の外出前になると、洋服のすそや袖を引っ張る
- 飼い主の靴の上にのったり、玄関に寝そべったりして外出を妨害する
9.飼い主の後をついてまわる
飼い主さんの外出前や帰宅後にあとをついてまわるのは、分離不安の初期症状の可能性があります。
飼い主と離れることが不安になり、ついてまわって、不安を解消しようとします。
▼こんな行動は要チェック
飼い主と離れることが不安になり、ついてまわって、不安を解消しようとします。
▼こんな行動は要チェック
- 飼い主が部屋から部屋に移動したり、着替えをしたりする間くっついてくる
10.留守番中や帰宅後に体調を崩す
留守番時や飼い主さんの帰宅直後に限って、体調を崩す子もいます。体調不良の症状としては、主に下痢や嘔吐、食欲低下があげられます。
▼こんな行動は要チェック
▼こんな行動は要チェック
- 長時間の留守番や旅行時に、下痢や嘔吐、元気喪失などの不調がみられる
- 留守中や帰ってきたときに一時的にフードを食べなくなる
分離不安の主な原因
分離不安の原因には、下記のようなものがあげられます。
- 過去の恐怖体験
- 環境の変化
- 運動不足や退屈
- 飼い主への依存
- 加齢
- 病気
過去の恐怖体験
留守番中に雷などの大きな音や、地震などがあり、怖い思いをしたのかもしれません。
ひとりになったらまた怖いことが起こるのではという不安からの症状です。
ひとりになったらまた怖いことが起こるのではという不安からの症状です。
環境の変化
リフォームや引っ越し、子どもや同居ペットが増える、生活パターンが変わる、飼い主さんが変わるなど、環境の変化がきっかけになることもあります。
運動不足や退屈
留守番が長いこと、飼い主さんとのコミュニケーション不足やスキンシップ不足、運動不足などが原因で発症するケースもあります。
飼い主への依存
コミュニケーション不足とは反対に、構いすぎが発症のきっかけになることもあります。愛情をたっぷり注いであげるのはよいことですが、普段から常に誰かが犬の相手をし、ひとりで過ごすことに慣れていないと、家族の不在に不安を抱くようになってしまいます。
甘えん坊な性格の犬は、飼い主さんに守られたい、構われたいという気持ちが強い傾向にあります。
「うちの子は甘えん坊だから」と、一日中べったりと離れないでいると、その傾向をより強めてしまうことがあるので注意が必要です。
少しずつ、適度な距離感をもって接することを覚えさせ、愛犬が一人の時間も楽しめるように、促してあげましょう。
甘えん坊な性格の犬は、飼い主さんに守られたい、構われたいという気持ちが強い傾向にあります。
「うちの子は甘えん坊だから」と、一日中べったりと離れないでいると、その傾向をより強めてしまうことがあるので注意が必要です。
少しずつ、適度な距離感をもって接することを覚えさせ、愛犬が一人の時間も楽しめるように、促してあげましょう。
加齢
老犬の場合、加齢で耳が遠くなる、目が悪くなるなど、機能の衰えが不安を生み出し、ひとりでいられない分離不安につながるパターンもあります。
病気
脳や神経の疾患が原因の場合も同じ症状がみられることがあります。しっかり様子を観察しましょう。
ほかの病気が原因のときは投薬などによる治療が必要になります。
ほかの病気が原因のときは投薬などによる治療が必要になります。
分離不安になりやすい犬種はある?
甘えん坊な性格から、トイプードルやチワワ、ミニチュアダックスフンドなどは分離不安になりやすい犬種といわれることもあります。
しかし、分離不安になる原因には、育て方や環境、年齢、病気などさまざまな要素があります。
犬種ではなく、愛犬と向き合ってあげることが大切です。
しかし、分離不安になる原因には、育て方や環境、年齢、病気などさまざまな要素があります。
犬種ではなく、愛犬と向き合ってあげることが大切です。
子犬も分離不安になる?
子犬でも分離不安の初期症状が表れる場合があります。
好奇心から飼い主さんのあとをついてまわったり、さみしさから吠えたりすることもありますが、成長するにつれて徐々に落ち着くことも多いです。
ただし、「ひとりでいるのはかわいそうだから」といって、ずっと子犬のそばにいると、飼い主さんへの依存心が強まってしまうおそれがあります。
子犬の時期から、次の「分離不安にさせないために」の方法を試してみましょう。
好奇心から飼い主さんのあとをついてまわったり、さみしさから吠えたりすることもありますが、成長するにつれて徐々に落ち着くことも多いです。
ただし、「ひとりでいるのはかわいそうだから」といって、ずっと子犬のそばにいると、飼い主さんへの依存心が強まってしまうおそれがあります。
子犬の時期から、次の「分離不安にさせないために」の方法を試してみましょう。
分離不安症にさせないために
分離不安にさせないための対策として一般的にいわれているのは、下記の5つです。
ただし、愛犬が不安を感じている原因を探り、それに応じた方法を考えることが大切です。
ただし、愛犬が不安を感じている原因を探り、それに応じた方法を考えることが大切です。
- 「離れる」練習をする
- なにも言わずに外出する
- 留守番環境を整える
- 運動をたっぷりさせる
- トレーナーや動物病院に相談を
「離れる」練習をする
まずは短い時間から、飼い主さんの在宅中に、愛犬ひとりの状況をつくってみましょう。
はじめは顔や姿が確認できる距離からでも問題ありません。台所や洗面所、ベランダなど、姿は確認できるけど愛犬が立ち入れない場所などの設定で始めましょう。少しずつ、距離と時間をのばしていきます。
はじめは顔や姿が確認できる距離からでも問題ありません。台所や洗面所、ベランダなど、姿は確認できるけど愛犬が立ち入れない場所などの設定で始めましょう。少しずつ、距離と時間をのばしていきます。
なにも言わずに外出する
いよいよ留守番本番ですが、飼い主さんは外出する際にはさり気なく、あいさつの声もアクションもできるだけ小さくしてください。
留守番はたいしたイベントではないのだと知ってもらうために、愛犬を興奮させないよう気を付けましょう。
留守番はたいしたイベントではないのだと知ってもらうために、愛犬を興奮させないよう気を付けましょう。
留守番環境を整える
留守番中になるべく怖いことが起こらないよう、工夫をしましょう。
室温管理はもちろん、天気予報も確認し、雷や雨対策をおこないます。雷予報が出ているときは、カーテンを閉める、雨戸を閉めるなど雷音に対する予防策をとっておきましょう。
室温管理はもちろん、天気予報も確認し、雷や雨対策をおこないます。雷予報が出ているときは、カーテンを閉める、雨戸を閉めるなど雷音に対する予防策をとっておきましょう。
運動をたっぷりさせる
散歩や遊びなどで運動をたっぷりさせてあげると、留守番中の時間帯の多くを、愛犬は心地よい疲労感の中で寝て過ごすかもしれません。
散歩や飼い主さんとの遊び、日光浴もおすすめです。
留守番時を絶好のお昼寝タイムにできるようにしましょう。
散歩や飼い主さんとの遊び、日光浴もおすすめです。
留守番時を絶好のお昼寝タイムにできるようにしましょう。
トレーナーや動物病院に相談を
いろいろと対策を講じても効果があらわれない場合や、改善どころか悪化しているように感じるときは、迷わずトレーナーやかかりつけ医などの専門家に相談しましょう。
行動学に基づくトレーニングが解決してくれるかもしれないですし、何らかの病気が関連しているのであれば、治療してもらうことで症状は緩和していくでしょう。
精神を安定させる内服薬やサプリもあり、動物病院では必要に応じて処方してもらえることもあります。
行動学に基づくトレーニングが解決してくれるかもしれないですし、何らかの病気が関連しているのであれば、治療してもらうことで症状は緩和していくでしょう。
精神を安定させる内服薬やサプリもあり、動物病院では必要に応じて処方してもらえることもあります。
やってはいけない対策
叱る
犬が留守番中に粗相をしたり、いたずらをしたりしたからといって、帰宅後に叱ってはいけません。
飼い主さんが何に対して怒っているのかを理解できず、パニックになってしまいます。
騒がず、冷静に片づけをしましょう。
飼い主さんが何に対して怒っているのかを理解できず、パニックになってしまいます。
騒がず、冷静に片づけをしましょう。
新しく犬をお迎えする
犬が分離不安症になってしまうのは、飼い主さんと離れることに不安を感じているためです。一緒にお留守番をする犬がいても、愛犬の不安は解消されないので効果的な対策とはいえません。
新しく犬をお迎えした場合、先住犬が新入りの犬に対してストレスを感じてしまう可能性もあります。不安要素が増えてしまうので、愛犬の分離不安対策として新たに犬を迎えるのは、有効な手段とはいえないでしょう。
新しく犬をお迎えした場合、先住犬が新入りの犬に対してストレスを感じてしまう可能性もあります。不安要素が増えてしまうので、愛犬の分離不安対策として新たに犬を迎えるのは、有効な手段とはいえないでしょう。
まとめ
分離不安症にならないためには、愛犬だけの時間も安心して過ごせるようにすることが大切です。少しの間でも「離れる」時間をつくるようにしましょう。
愛犬に分離不安の症状がみられる場合は、まず原因を見極め、ここで紹介したような治し方を試してみてください。育ってきた環境は犬それぞれ異なるため、症状がなくなるまでの時間は、一概には言えず、長期戦になることもあります。
それでも愛犬に向き合い、不安を取り除いてあげることで、愛犬を落ち着かせ、穏やかな状態に近づけてあげることは可能です。
そうすることで、少しずつでも分離不安の傾向は薄れていくでしょう。
愛犬に分離不安の症状がみられる場合は、まず原因を見極め、ここで紹介したような治し方を試してみてください。育ってきた環境は犬それぞれ異なるため、症状がなくなるまでの時間は、一概には言えず、長期戦になることもあります。
それでも愛犬に向き合い、不安を取り除いてあげることで、愛犬を落ち着かせ、穏やかな状態に近づけてあげることは可能です。
そうすることで、少しずつでも分離不安の傾向は薄れていくでしょう。